岡嶋祐史『迷惑メールは誰が出す?』(新潮新書)

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(岡嶋裕史著、新潮社、680円+税)出勤してまず初めにする仕事が、迷惑メールの削除。こんな笑い話にもならない日常を過ごしている人は少なくないだろう。無理もない。全世界で一日に送信されているメール1530億通のうち、迷惑メールの割合が85%にも上るというのだから。

最近では、迷惑メールを「分別」する迷惑メールフィルターもあるし、ウィルス対策ソフトもある、それに職場では会社がそれなりの防御措置を講じてくれているから、少しくらい手間がかかっても仕方がないーーその程度に考えていないだろうか。
しかし、この迷惑メールが「削除の手間」以外に、私たちの日常に大きな悪影響を及ぼしているとしたらどうだろう。

たとえば、仕事でデータの送受信に時間がかかる、途中で通信が切断されてしまって何度も送信し直さなければならない、という経験をしたことはないだろうか。あるいは、自宅で動画ポータルサイト「YOU TUBE」などに掲載された動画を閲覧する際に、コマ送りのような映像になったり、途中で映像が止まってしまった、という経験は?

その要因のが迷惑メールの仕業なのである。岡嶋氏によると、インターネット上を流れる通信量が幾何級数的に増大するのに伴い、インターネットの通信容量が増強されてきたものの、「その増強分を迷惑メールが喰ってしまっている」という。さらに、迷惑メールの中で最も多いのが存在していないメールアドレスに送られたメールで、その大半はホームページやブログに掲載されたメールアドレスを手がかりに、迷惑メール送信者がアルファベットや数字を組み合わせて大量に作り出したもので、それがインターネット上を行ったり来たりしていることによって通信速度の低下が起きているというのである。

本書では、こうしたインターネットの通信インフラに与える迷惑メールの現状を踏まえながら、迷惑メールがどんな手段・ルートでインターネット上に紛れ込んでくるのかを、図と平易な文章で解説。さらに、迷惑メールの大半を占める広告目的のものと、フィッシング詐欺、ワンクリック詐欺などの詐欺目的のものについて実際のケースを交えつつ、今すぐ着手できる具体的な対策や最新の技術を紹介している。

ただし、いくら技術的な防衛手段を講じても、その網の目をくぐる技術はそれを上回る勢いで進化し、巧妙になってきているのが現実である。インターネットの利便性を今後も享受し続けるためには、「すべてのインターネット利用者、メール利用者がもう一段階突っ込んだ情報リテラシを持つ必要が出てきた」と、岡嶋氏は言う。「結局は自分で勉強するしかないのか」と思うといささかがっかりするが、どんなにセキュリティ対策をほどこしても、自らの不用意なクリック一つで大変な災いーーワンクリック詐欺などーーに巻き込まれる危険性があることは確かである。

たとえば、会社で深夜一人で残業しているとき、対策の網の目をかいくぐって到着した迷惑メールがあったとする。メールの本文には、水着姿の豊満な女性の画像。周りに誰もいないし、無料サンプルと書いてあるから、ちょっとだけ覗いてみよう・・・。そして「無料サンプルはこちら」などという表示をクリックした途端、「個人情報収集中」という画面が出てきて、あたふたしているうちに「ご利用料金:○○万円」「振込期日:本日より2日以内」「支払い期限を過ぎても入金が確認できない際は、自宅や勤務先へ直接請求させてもらう可能性がある」などという、信じられないような文面が表示される・・・。そんなメールに引っかかるほうがバカだと言うなかれ。岡嶋氏によると、有名サイトを真似た体裁のメールを送りつけ、有名サイトのページにアクセスしたつもりがなぜか詐欺サイトに誘導されてしまったりするケースがあるというから、他人事ではないのである。

さらには、クリックしていないのに迷惑メール送信者のカモになってしまうケースもあるという。先ほどのように、水着姿の豊満な女性の画像が掲載された迷惑メールを受信した場合、「クリックするなんてバカなことはしない」人でも、そのメールを開いただけで迷惑メール送信者にアクセスしてしまうことがあるというのだ。

なぜ、そんなことが起こるのか。メールを開いただけなのに、いったい何をしてしまったのか。本書は、そうした「自分が何をしたのか(しようとしているのか)」「(自分の行動で)インターネット上で何が起こったのか」について、分かりやすく解説している。メールあるいはインターネットが仕事でもプライベートでも不可欠のツールとなっているいま、「被害を受けないためにはどうしたらいいか」を知っていることは大きな自己防衛になる。被害には遭いたくないがパソコンやインターネットの詳しい話は苦手という人には、特にお勧めしたい一冊だ。(出版WEB担当・湯田)

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