(『新潮2009年1月号』、新潮社、952円+税)昨年1月号では、つや消しブラックに銀文字というセンセーショナルな表紙と、直木賞・三島賞作家古川日出男氏の朗読CDを付録につけて話題を呼んだ『新潮』が、今年はさらにデザインを変更。伝統の明朝体ロゴを捨て、モダンなタイポグラフィーに生まれ変わった。デザインはあの大竹伸朗氏。同氏のマガシンワークは、隔月刊ヴィジュアル誌『風の旅人』(ユーラシア旅行社)のカバー制作以来ではないだろうか。カラーは赤と黒の2色。スタンダールの『赤と黒』に隠された意味は、軍人と聖職者、あるいはルーレットの模様から「一か八か」、など諸説あるが、これは『新潮』のリニューアルが「賭け」だということか?
創作特集は佐藤友哉の『デンデラ』(620枚)だが、これは正直云ってあまり出来の良い小説ではないと思う。50人の登場人物(きちんと数えていないからもしかすると50人は登場しないのかもしれない)という設定には、当然のことながら、トルストイ『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』並みの徹底したコントロール力が必要だろうが、佐藤氏がそれに成功しているとは思えない。根本的に、これだけ多くの登場人物を把握しながら読み進めるために、ですます調の文体は絶望的に無力である。描写力も弱く、それゆえに文体の中に入りこめない。ある意味では会話を拒否した物語と云える。何らかの隠された試みがあるとしたら・・・それは分からない。読解力のある人には、深読みを期待したい。表面的には、物語と神話の融合・・・そんなホメロス−ボルヘス的な野心が見え隠れするが、文体に詩が感じられないことが、そういう野心を単なる技術的、観念的な試みにとどめてしまっている、そんな一作と云うしかない。次に続く川上弘美氏の短編『aer』のほうが、題材は日常的ながら、より深い神話的世界に触れることに成功しているのが、皮肉である。
それはともかく、内容についてこれ以上ネタばらしはやめるが、島尾敏雄の未発表遺稿集とそれに対する桐野夏生氏の特別寄稿は非常に魅力的な企画というか発見だし、最近『日本語が亡びるとき』(筑摩書房)を上梓された水村美苗氏と梅田望夫さんの対談もひどく興味深い。今年の『新潮』は注目だ。(出版WEB担当・川村)





















