
(ブルータス2009年1月1・15合併号、マガジンハウス、590円・税込)特集「生き方を考える本。」の巻頭は「男が惚れる男、女が憧れる女」。チェ・ゲバラ、北大路魯山人、伊丹十三、開高健、南方熊楠、赤塚不二夫、ル・クレジオ、須賀敦子、岸惠子、向田邦子、椎名林檎の11人を取り上げ、彼らの著作など4点を紹介している。
中でも注目したいのは、随筆家・翻訳家の須賀敦子。昭和4年に裕福な家庭に生まれた須賀は、自らが身を置くブルジョワ風の環境に幼少期から違和感を感じ、女学校卒業後に花嫁修業に入るというレールの上を歩むことを拒否し、新制の聖心女子大学に進学した。その後の彼女の人生(これが「女が憧れる女」たる所以だろう)に関しては、ブルータス本誌を読んでいただくとして、ここでは須賀を知る上で印象的な、サンテグジュペリに言及した『遠い朝の本たち』(ちくま文庫、609円・税込)の一文を紹介したい。
「建築成った伽藍内の堂守や貸椅子係の職に就こうと考えるような人間は、すでにその瞬間から敗北者であると。それに反して、何人にあれ、その胸中に建造すべき伽藍を抱いている者は、すでに勝利者なのである」(中略)自分がこうと思って歩きはじめた道が、ふいに壁につきあたって先が見えなくなるたびに私はサンテグジュペリを思い出し、これを羅針盤のようにして、自分がいま立っている地点を確かめた
先行きの見えないいま、須賀のこの言葉は腹の底にずしんと響くものがある。
須賀敦子については、『考える人』2009年冬号(新潮社、1400円・税込)でも特集している。タイトルは「書かれなかった須賀敦子の本」。須賀が初めて挑んだ小説と言われる『アルザスの曲がりくねった道』の未定稿やメモのほか、担当編集者の回顧録「一九九六年九月、最後の旅」、妹・良子さんのロングインタビュー「姉のこと」、友人だった作家・池澤夏樹の寄稿「アルザスに着くまでの道」など、どれも読み応えのある充実した内容である。
「遠藤周作さんが『白い人』で書いた世界の、その後を私は書かねばならない」(「一九九六年九月、最後の旅」より)
こう語ったという須賀が、もし『アルザスの曲がりくねった道』を完成させていたとしたら、どんな作品になったのだろう。今となっては想像するしかないが、その想像さえ魅力的なものにしてくれる特集である。それにしても、『考える人』。創刊当初は地味な内容で、(小林秀雄賞をのぞけば)宣伝力もイマイチじゃないかと思っていたが、コツコツと良い特集を積み重ね、いまや純文学の文芸誌より、本好きの果てることなき欲望を満たしてくれている。間違いない。(出版WEB担当・湯田)





















